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買い物かご

カートの中は空です

買い物を続ける

硬水のせいだよ

世の中には色々なマニアがいますが、一部に「測定(機)マニア」と呼ばれる人々が存在するらしいと聞きました。

新機能の付いたレーザー距離計が発売される度に買い揃え、どうでもいい奥行き寸法や天井高を何度も何度も測っては「LeicaにBosch、やはり光学系はドイツ製に限る」などと悦に入る人もいるようですが、そこまでいくと少々私の理解を超えています。

さて、熱帯魚水槽用の水質測定キット(ドイツ製)をAmazonで衝動買いしてしまい、その理由を探す必要があったため、個人的な今年の目標を「数値化・可視化・高解像度化」とすることにしました。

さあ何を測ろうか(そもそも熱帯魚は飼っていないので)と少し考え、ここは思い切って水質を測るべきであろうということで、近所のスーパーでミネラルウォーター全種類を買ってきて、吉川醸造の井戸の水(仕込み水)と比べてみました。

TOPページにもあるように、吉川醸造には1~3号の井戸があります。昨年もそれぞれ50項目以上の水質調査を行っており、安全な水であることは保証付きですが、とりわけ硬度の高さ(一番高かったのが2号井戸で147mg/L)は日本では稀でとても印象的である、と調査機関に指摘されました。

ここで簡単にご説明しますと、水の硬度とは
硬度 (mg/L) ≒ カルシウム濃度 (mg/L)×2.5 + マグネシウム濃度 (mg/L)×4.1 (アメリカ硬度)で計算される数値で、WHOの基準では

  • 軟水:0 - 60未満
  • 中程度の軟水(中硬水):60 - 120未満
  • 硬水:120 - 180未満
  • 非常な硬水:180以上

とされています。

ボトルに記載された公称硬度の順に並べてみました。

A:27、B:30、C:38、D:51、E(吉川):147、F:304 で、Fはヨーロッパの水らしくやはり硬度が高いですね。後述するTDSを測定するとA~Cの数値は逆転したりして面白いのですがそれはまた別の機会に。


日本の水はほとんどが軟水ですが、その理由は地形にあります。 日本の地層はミネラルの少ない火成岩が中心で、険しい山脈が多く川の傾斜も急で、源流から海までの距離が外国(例えばヨーロッパ)に比べて短くなっています。そのため、雨水が地面に浸透する過程でミネラルがあまり吸収されず、川や海に流れ出て行くのです。

吉川醸造の仕込み水は丹沢大山(地層マニア的に言うと岩相は丹沢層群大山亜層群に属して角礫岩、玄武岩質~安山岩質の溶岩を主とし、デイサイト質凝灰岩、凝灰質泥岩、石灰岩を伴う以上早口)の伏流水ですが、かなり長い時間をかけて地層・岩盤の中を通っていく間にミネラルを吸収している結果としての硬度の高さだと思われます。

酒造では醸造過程で硬水を使用するとミネラルが酵母の働きを活発にしてアルコールすなわち糖の分解が速く進むので硬水で造れば醗酵の進んだ辛口の酒になり、逆に軟水を使用するとミネラルが少ないため酵母の働きが低調になり発酵がなかなか進まないので醗酵の緩い甘口の酒に仕上がる。(Wikipediaより)

厳密にはカルシウムとマグネシウムの比率やそれ以外のミネラルの要素などもありそう一概にも言えないのですが、いずれにしても水の硬度によって味が変わることは事実のようです。(ちなみにミネラルと言っても鉄分やマンガンは酒を変色させたり劣化させたりするので望ましくないのですが、吉川の井戸水はいずれも測定限界値以下です宣伝)

日本酒では「灘の男酒、伏見の女酒」(それぞれ硬度120-170、80-90程度の仕込み水を使用)というように硬水も好まれる素地がありますが、ここまでまるで酒蔵のような話が続いたので、無理やり私の好きなコーヒーとそれを抽出する水に持って行きます。

世界中で一日20億杯が飲まれているというコーヒー。
書籍「世界一美味しいコーヒーの淹れ方(ワールド・バリスタ・チャンピオンの井崎英典氏著)」によれば、これまでコーヒーの抽出に適した水の重要性はTDS(総溶解固形分。つまりカルシウムやマグネシウムだけでなく水に溶けている全ての溶解性物質の総量)で語られて来ましたが、2014年のバリスタ・チャンピオンシップでのMaxwell Colonna-Dashwoodのプレゼンテーションによって、炭酸塩硬度(KH)の重要性が「発見」されたと言います。

画像をクリックするとYouTubeに飛びます


著者によれば、
カルシウム:主に質感(ボディやマウスフィール)を引き出す
マグネシウム:主に酸味(フルーティーさ)を引き出す
とのことで、これを見ると、それまで最良とされてきた水の硬度よりも、例えばエスプレッソを淹れるにはより高めの硬度の水が合うということのようです。

ミネラルウォーターを飲み比べると確かに差は感じますし、簡易な水質検査キットで比較しても明らかに(視覚的に)差が出ますので結構面白いです。やはり検査キットはドイツ製に限りますね。

軟水が多いためミネラル不足になりやすい日本人にとって、硬水は「ミネラル補給、便秘解消、代謝促進、動脈硬化の予防」など様々なメリットがありますので、硬度高めのミネラルウォーターや吉川醸造の日本酒から積極的に摂るようにしたいものです。

「いずれ人々は水のミネラルの数値を分析してコントロールするために硬水と純水(精製水)やコンビニの純氷を用意して「水の水割り」「水のオンザロック」とかを楽しむようになるんじゃないかな?」と言ってみたところ、当蔵の唎酒師Tに「フフン」と鼻で笑われてしまいました。
硬水のせいだよ。

…。

「感性の歴史家」と呼ばれるアラン・コルバンは言いました。
「現代では、水は主に科学と、分析と、コントロールの対象になりました。しかし、だからといって、水の魅力が全くなくなったわけではありません。水はいまだに、様々な信仰と、幻想と、とりわけ夢を育む豊かな媒体なのです」

シビレますね。そうだ「数値化」が全てじゃない、自分も今日から感性で生きて行こうと考え直しましたので、今年の私の目標も三日坊主に終わりそうです。
そう硬水のせいだよ。


GN

先が見えず吹き荒れるコロナの嵐。(このブログのように)オチが読めるようだったらどんなに気が楽なことでしょうか。

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