永遠に延々と円

以前の喧騒とイルミネーションが幻だったかと思うほど穏やかなクリスマス週間でした。その分「おウチでクリスマス」が流行のようで、玄関ドアに自作のクリスマスリースを飾るご家庭も目立つ気がします。

このリース、まだキリスト教が存在しなかった古代ギリシャ時代に誕生したと言われます。「円」は永遠を意味し、永遠に続く神の愛を象徴、永遠の幸福への願い、新年の幸福の祈願を意味するのだそうです。

 

日本でも円形というのは縁起が良い形状で、だからこそ酒樽も人々の幸福を祈り祝福をあげる席での鏡開きに使われます。「鏡」というのは円形であることを指し、お供えの鏡餅を正月に食べることも同様に鏡開きと呼びます。

吉川醸造では毎年この時期になると、杜氏たちがリースではなく酒樽に菰(こも)を巻きます。菰巻きを修得するには45年かかると言われ、特に上部の菰に菱形がきれいに並ぶように張力のバランスをとりながら飾り縫いするのはかなりの技術が要求されます。

 

実際に酒樽の蓋を叩いて割ってみました(かなりの力が必要です)が、「カコーン」という秋田杉ならではの澄んだ、気持ちのよい音がします。

何かを「叩き割る」行為は、空手教室に通っている方とか空き巣を職業としている方でない限りは非日常体験のはずですから、日頃のストレス発散にもなり大変お勧めです。完全受注生産品につき今年はもうお申込みを締め切らせていただきましたが、来年になりましたら是非お買い求めください。一家に一樽。

 

などと宣伝文句を考えながら夜の住宅街を物色もとい、歩いていたところ、ヒイラギで組んだクリスマスリースを見かけて微かな既視感に襲われました。ヒイラギのトゲトゲはキリスト受難の「冠」を示すと言われます。

円形にトゲトゲ。そうだコロナも確かその形状から「Corona(ギリシャ語で冠)」と名付けられたのだったと思い出し、今年はとにかくこの丸くて小さな禍々しきものに振り回された年だったとため息が出ました。「今年の漢字」ならぬ「今年の形」があればこのトゲトゲの円が大きな筆で描かれたことでしょう。実際は誰の目にも見えないのに。

 

 

歴史は点の集合だ。いや線だ。いやいや巡り巡る円環である。と昔の哲学者は議論しました。

去年の今頃は「こんなことになろうとは」誰にも予測できませんでした。とは言うものの過去にはペストやスペイン風邪など、世界的感染症は周期を刻んで繰り返し発生しているのもまた歴史的事実です。その意味では同じ円環でも中心や半径を変えながら動き続けているのが歴史の形なのかもしれません。

予測できないからこそ、どんな未来が来るのか予想するのも楽しいことです。皆が競ってアフターコロナの世界を予想したのも、今年の風景として思い返される日が来ることでしょう。

 

(おまけ)

Q:未来の人々の発言として、①~④で最も近いと思われるものをお選びください。

①「2020年は街を歩く全員がマスクをしていて、とにかく異様な眺めだったよ」
②「2020年以前は冬なのにマスクをしてない人がいて、インフルエンザという病気が毎年流行っていたんだって。信じられない」
③「そろそろ夏用のマスクをタンスから出さないとね。デザインはちょっと流行遅れだけど」
④「地球人ノ集音器官ハ、呼吸器ふぃるたーヲ装着スルタメノ最適形状トナルヨウ進化シタ(いい加減な宇宙人の教科書)」

 

GN

 

「輪廻」という言葉もありますね。

Francesco Tristano - Circle Song