雨の香り

久しぶりの雨。

 

降り始めに「ふわっ」という香りが鼻孔をくすぐるような気がしませんでしたか。この香り、いわゆる「ペトリコール」と呼ばれるものです。1960年代にオーストラリアの鉱物学者が発見し、ギリシャ語の”petra”(石)と”ichor”(神からの贈り物)という言葉を掛け合わせて「石のエッセンス」という意味を持つ造語です。

 

「特定の植物から生じた油が地面が乾燥している時に粘土質の土壌や岩石の表面に吸着し、雨によって土壌や岩石から放出されることにより独特の匂いが発生する」(wikipediaより)のだそうです。

 

個人的には懐かしいようなほっとするような香りですが、これをモチーフにした香水とかお香か何かないかなと思い調べたところ、やはり何種類かありました。そのうちの一種類の謳い文句は「このフレグランスは、いつでも雨が降った後の地面から漂って来る香りを身にまとうことができる」。うーむ。

 

注意深くて繊細な方は「雨上がり」にも、また別の香りが漂うことに気づくかもしれません。こちらは「ゲオスミン(大地の匂いの意)」と呼ぶのだそうです。土中のバクテリアなどによってつくり出される有機化合物の微かなカビのような匂いで、雨が蒸発していく過程で拡散します。

 

ゲオスミンのことは最近になって知ったのですが(言われてみれば雨の降り始めとは確かに違うかもな、という程度)、今まで知覚はしていても認識していなかった、このような事物にも名前がついていることを知ると、世界の見方の解像度が上がった気がして嬉しくなります。

 

とはいえこのペトリコールとゲオスミン。一生のうち日常会話で使うシチュエーションがなかなか思い浮かびませんね。このブログのようにこれ見よがしに披露しようものなら「このウンチク野郎が」と白い眼で見られるのがオチです。そうならないよう、自然に聞こえるようにちょっと練習してみましょうか。

 

「特定の植物から生じた油が地面が乾燥している時にだよ、粘土質の土壌や岩石の表面に吸着してね、雨によって土壌や岩石から放出されることによってさあ(中略)ペトリコールとゲオスミン。これってまさに天からの贈り物ってこと。ロマンチックだよねえ(早口)」

 

「白目」

 

GN

 

 

 No Rain, No Rainbow.

 Somewhere over the Rainbow - Israel Kamakawiwoʻole