日々是麹中

タイトルは有名な禅語「日々是好日」(英語で"Every day is a good day.")の駄洒落です。いつものやつです。

「ひびこれこうじつ」と読むのだと今の今まで思っておりました。以前は建設現場でコンクリートのクラックを見るたびに「ヒビこれ工事中(ひびこれこうじちゅ)」「こうじちゅ~」と舌足らずな冗談を言っていたのですが、広辞苑には「にちにちこれこうじつ」、またある辞書には「にちにちこれこうにち」と読むのが正式だと書いてあるではありませんか。工事中

日常的には「ひびこれこうじつ」とも読むということで、ほっとしました。現場で「こいつは何を言っているんだ」と思われていたのだとこの先ずっと悪夢を見続けるところでした。

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さて今日は「麹(こうじ)」造りについて。酒造りの世界には「一麹、二酛、三造り」という言葉がありますが、これは日本酒造りの工程の順番を示すと同時に、その重要度を順に並べたものでもあると言われます。

 

一番大事なのが蒸米に麹菌(つまりカビの仲間)を繁殖させる「麹」、次に重要なのは「酛(もと)」と呼ばれる「酒母(しゅぼ)」。そして、最後に「醪(もろみ)」を造って発酵させるのがその順番である、と。

 

コウジカビ(麹黴)は麹菌(きくきん)ともいい、アスペルギルス (Aspergillus) 属に分類されるごく普通の不完全菌の一群である。このうち一部のものが、麹として味噌や醤油、日本酒を作るために用いられてきたことからこの名が付いた。コウジカビは、増殖するために菌糸の先端からデンプンやタンパク質などを分解する様々な酵素を生産・放出し、培地である蒸米や蒸麦のデンプンやタンパク質を分解し、生成するグルコースやアミノ酸を栄養源として増殖する。(wikipediaより)

 

 

日本酒造りにおいて麹の役割は大きくわけて3つあります。

①蒸米の溶解・糖化のための酵素の供給
②酵母の増殖や発酵の促進のための栄養素の提供
③麹菌の生産物による酒質形成

 

要するに酒ができるかできないか、美味しくなるのかならないのかを決める「超重要」なポイントということです。我々も麹室(こうじむろ)を案内するときに「蔵の心臓部です」と紹介することが多いです。麹室

 

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【吉川醸造の麹造りの手順】

①「杉山流」では、農学博士の故杉山晋朔先生の教えを基本に、蒸米は通常40分蒸しで可とされるところ、1時間15分かけてしっかりと蒸し上げて、米のアルファー化を行います。

②蒸し米の目安は甑(こしき)内の乾燥蒸気が抜けてからの時間で考慮します。

③蒸しあがった米は50度程度の熱い状態のまま麴室内へと運び、粗熱と水分を室温32度から35度、湿度55%程度で調整し、米の温度にして31度から32度、米の手触りは表面が少し乾いたタイミングで種麴菌を散布(種切)します。麹

使用する種麴菌の種類は、求める酵素力価によって様々な品種があり、特徴的な菌だと焼酎で使われる白麴や黒麴なども清酒用として販売されており、それらの菌を用いるとクエン酸を製成するためお酒の味わいに新しいエッセンスを加えることが可能です。麹

吟醸酒用の麴を製造する際は、グルコアミラーゼやαアミラーゼといった糖化酵素の製成が必須となる為、特に吟味した種麹を使用します。

 

吉川醸造の種麹の散布量(一般的な純米酒等)

酛麴で蒸米100kgあたり100gが標準
添麴で蒸米100kgあたり60gが標準
仲麴で蒸米100kgあたり40gが標準
留麴で蒸米100kgあたり20gが標準

 

吉川醸造の種麴散布量(吟醸酒)

酛麴で蒸米100kgあたり50gが標準
添麴で蒸米100kgあたり30gが標準
仲麴で蒸米100kgあたり20gが標準
留麴で蒸米100kgあたり10gが標準

 

一般的な純米酒などの麴造りは、酒に豊かな味わいをもたらすために総破精麴(そうはぜこうじ:米の表面および内部に菌糸を形成)の状態に仕上げます。酵素力価もバランスのよい麹が出来上がります。

一方、吟醸造りでは突破精麴( つきはぜこうじ:米の表面にまばらに菌糸が生え、米内部の深くまで菌糸が食い込んだもの)で、糖化酵素力価が強くタンパク分解酵素の力が比較的低い麴造りが一般的です。

その主たる理由としてタンパク質を大量に分解するとアミノ酸が多く製成され、吟醸酒のような香り豊かできれいな味わいを目指す酒質にならないためです。

 

 

図中黒い部分が「破精(はぜ)」。(日本醸造協会「最新酒造講本」より)麹

よって、グルコアミラーゼやαアミラーゼ等の糖化酵素をバランス良く製成する麴菌を用い、酸性プロテアーゼや酸性カルボシキペプチダーゼ等のタンパク分解酵素の製成を低く抑える必要があります。

特にグルコアミラーゼ力価250単位、G/α比50単位(グルコアミラーゼ・αアミラーゼ比)に注意した製麴が必須となります。

吉川醸造では杉山先生の醸造理念のもと、一般的な麴造りの種麴散布量よりやや多めの(企業秘密)菌を散布し、伝統の蓋麴と大箱を使用した丁寧な麴造りを行っております。

 

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過去イチで酒蔵らしいブログになりそうです。
全部、水野杜氏に書いてもらいました。ありがとうございます。

 

 

以下の麹分析結果表は今期のあるお酒のものですが、杜氏によれば「狙い通りの数字(にっこり)」らしいので公開します。「徳島県産山田錦」は吉川では初めての米ですが、思いのほか扱いやすかったようです。麹分析

 

次は兵庫県産の山田錦(特A地区!精米歩合30%!)をこんな風に袋に入れて分析機関に依頼します。麹 分析

 

袋から少し出して写真を撮ってみました。よく見ると一部まだらになっていることがわかります。これが「突破精麹」。麹

 

しかし何とも小さい。。。山田錦は米の中でもかなり大粒な酒米ですが、精米歩合30%まで削っているので直径1~2mmほどしかありません。
それでも少し毛羽だっている感じが伝わるでしょうか。噛んでみるとスッと歯が入り、ほのかな甘味を感じます。

 

こんな小さな粒子を大量に寄せ集めてようやくお酒はできるのですね。

 

ああ、1粒がもっと大きければもっとたくさん美味しいお酒ができるのに。

 

 

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というわけで研究の結果、麹の一粒を拡大する方法(麹拡大培養法)を発見しましたのでここに公開します!これから分析機関に提出します!オケナイト

全体的に表面が菌糸で覆われているので「総破精麴」ですね!サイズは容積にして通常のざっと1000倍!オケナイト

これでしっかり味の乗った、おいしい純米酒が1000倍できますね!オケナイト

 

 

などとテンションを上げてみました(誤用)が、もちろんこんな麹はありません。

 


これは鉱物ファンならおなじみ「オケナイト(okenite)」というインド産の「鉱物」。つまり石です
別名「ラビットテール(ウサギのしっぽ)」と言われる石で、確かにふわふわとしたウサギの毛のようなものが表面を覆っています。
細いガラス質の繊維が放射状に成長したもので、これほど柔らかく見える石は他にありません。触るとビロードのような手触りです。

 

パワーストーンとして珍重されています。
以下(https://and-stone.com/articles/19369/)より引用

- 持ち主の心を癒し、心の痛みを和らげる
- 心の傷から立ち直り、前に進むパワーをもたらす
- 平穏な日常を取り戻す
- 邪悪なものや人の悪意や攻撃から守る魔除けの効果
- 果てしなく続く争いを終わらせるためのお守りの効果
- 持ち主の視野を広げて心の成長を促す
- 限界を突破し真の能力を開放する
- 仲間や協力者を引き寄せ結束力を高める

こんな人におすすめ

- 心が傷つき癒しが必要な人
- 安心できる居場所が欲しい人
- 前に進んで歩き出す気力が欲しい人
- 争いを終わらせたい人
- 新しいことに挑戦し能力を発揮したい人
- 大きな計画を決行しようとしている人

 

 

 

 

まさに無敵の石です。前回の御朱印に引き続き、今回も画面越しにパワーが伝わりますように。

 

 

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今日はこれでお終いです。
思いのほか話が広がらず、ずいぶん中途半端なものになってしまいました。

 

これが本当の「麹中」。。。おあとがよろしいようで(にっこり)。

工事中

 

GN

 

 

カビの成長っぽい映像ということでこれ↓(マックス・クーパー「カオスからの秩序」)を思い出したのですが、麹造りの重要度が高いのは「カオス理論」からも説明できますね。いわゆる「バタフライ効果」、「ブラジルでの、1匹の蝶の羽ばたきが、アメリカのテキサス州での竜巻の発生につながる」というやつで、初期条件で結果が大きく違ってくるということを示します。こっちから話を膨らませればよかった。。。
本人のホームページを見ると、出だしでパラパラいっているのは窓にあたる雨の音をバイノーラル録音しているそうなので、ヘッドホンで聴くと楽しいと思います。

Max Cooper - Order From Chaos