雪は降る 日向(ひなた)は寒い

松の内も明けましたが、本年も何卒宜しくお願いいたします。

 

この正月休みには、伊勢原市が編纂した調査報告書「伊勢原の民俗ー比々多地区ー」(1992年なので30年前の刊行)をぱらぱらと読んでおりました。

食生活の章で「酒」にも頁が割いてあり、吉川醸造の造りの特徴である蓋麹法など、かなり詳細に記述されています。にごり酒

 

他にも、、、

<麦酒(ムギザケ)>麦麹を瓶に入れ、湯ざましをヒタヒタ程度に入れて密閉しておくと、ムギザケが出来る。ムギザケは濾さないでそのまま飲む。

今ではやっておりません。

 

 

蔵のある神戸(ごうど)地区周辺の、今では行われていない年中行事や口承のわらべ歌、方言なども事細かに記してあり、なかなか興味をそそられます。

例えば本日1月8日は「茅(かや)刈り正月」の日だそうです。

8日はかつて茅刈り正月といって休日とし、夕方よりショイバシゴや大八車をもって、大山地区にある共有林に行き茅を刈り取った。茅は8日の夜から9日まで刈って良いとの制限はあったが、刈り取る量は無制限であった。刈り取った茅は、茅葺屋根用として売れたので一生懸命やったという。大正の末ごろに、植林をするため茅を全部取ってしまったためこの行事も消滅した。

茅(かや)という植物はない(ススキやヨシなどの総称)ので、実際に共有林で何を刈り取っていたのかわかりませんが、伊勢原で「茅葺屋根」と言ったら何といっても日本三大薬師の「日向(ひなた)薬師」です。

茅葺屋根の建物として国内最大級の規模を誇るだけでなく、ぽってりした屋根の微妙な曲線がとても美しいので(近いし)ときおり訪れたくなります。日向薬師

これは春先の雨上がりに撮った写真ですが、屋根全体から湯気がゆっくりと立ち上って(写真で見えますでしょうか?)、とても幻想的な雰囲気になります。

「日向」の地名は、大山を「あらぶる」神の山としての「雨降山(あふりさん)」、それに相対する日向を「ひむけ」、即ちあらぶる神の鎮静の地(宇都宮泰長・鈴木隆良著「大山不動と日向薬師」より)が由来のようです。

 

「雨降」/「日向」がきれいな対称性を持っていますね。

 

久しぶりに行ってみようと思いたちましたが、この日(1月6日)はあらぶる「雨降」の方が優勢でした。
神奈川では珍しい大雪です。吉川醸造

棚田も雪で真っ白。日向の棚田

名産のみかんも雪をかぶっています。伊勢原 みかん寒い。


「神奈川にしては」などと偉そうに言いましたが、私は瀬戸内育ちなので寒さには極端に弱く、冬は変温動物のように動きが鈍くなることを思い出しました。伊勢原 雪階段を上ってきます。異世界への入口のようです。日向薬師日向薬師日向薬師日向薬師日向薬師

雪の吸音効果のせいか、とても静かです。誰もいません。日向薬師到着しました。雪により屋根形状がさらに美麗に見えます。日向神社

誰もいないはずです。雨や雪の日はお休みということを忘れていました。日向薬師建物の中には入れませんが、外を回るのはご自由に、と係の方に言っていただいたので歩き回ってみます。他には(当然ですが)誰もいません。日向薬師日向薬師日向薬師日向薬師

下から見上げると茅葺の様子がよくわかります。

 

建築技術的観点からは、茅葺屋根はあんなにスカスカの材料なのになぜ雨漏りしないのか、という疑問が以前からあったのですが、調べてみると水という液体の表面張力や毛細管現象などが合わさって導水効果が生まれているようです。普通だと毛細管現象は雨漏りの原因になるのですが、茅葺屋根では逆にはたらくようで、径年で茅が自重により密実になってくると漏れ始めるらしいのですね。この辺が個人的には超面白いところなのですが一般的にはどうでもいい話だと思うのでまるで早口言葉のように書き終えます。

 

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お寺ですので神社のような拍手は不要です。静かに両手を合わせ、心の中で祈願します。

薬師如来のご真言は「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ」。(『ひらけゴマ』『チチンプイプイ』みたいな)呪文のように聞こえますが、オンは宇宙の始めを表す聖音、コロコロは「厄病を取り払え」の意味だそうです。 

 

コロコロ!

 

 

お休みではあったのですが、係の方に「御朱印ならご用意しますよ!」と快く言っていただきましたので、ありがたく頂戴してきました。御朱印

寅年にお薬師様にお詣りすること寅薬師といい、より強い御縁を結んで頂けると言われています。かつて当山は寅年のみ御本尊のご開帳を行っており、今年はその御縁年にあたります。12年に一度の特別な1年を記念して、限定の授与品を用意いたしました。(日向薬師HPより)

今年は特別な年なのですね。ご利益が皆様にも届きますように。一日限定50枚だったそうです。御朱印

 

 

いつにもまして「酒」成分が少なかったので、アリバイ的に山道で撮った写真を載せておきます。にごり酒にごり酒にごり酒インスタでよく見かける「雪とお酒」をたくさん撮りたかったのですが、イジケンボ(このあたりの方言で「寒がりの人」のこと)にはこの寒さが堪えられず早々に撤退しました。

 

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本年も宜しくお願いいたします。もっと精進してホーゲモネー(同「途方もない」)お酒をウントコサー(同「たくさん」)造りたいと思います。

 

 

GN

 

 

寒そうなMVと言ったらこれ。「そこまでしなくても」とラストで震えます。

James Blunt - You're Beautiful