間もなく終了ということで、「世界のブックデザイン2022-23」展に行ってきました。(リンク)
—以下抜粋—
本展では2023年4月にドイツ・ライプツィヒブックフェアで発表された「世界で最も美しい本2023コンクール」で選ばれた受賞図書とともに、日本の「第56回造本装幀コンクール」をはじめ、ドイツ、オランダ、スイス、カナダ、中国、そして韓国で開催された各国コンクールの受賞図書約140点を展示します。
展示では、これらの本を例年通りすべてお手にとって、世界のブックデザインの潮流を実感いただけます。
残念ながら会場内の撮影は禁止です。
「ムシロ」を表紙に使ったものや、頁が綴じられておらずバラバラになっているものもありましたが、基本的には「複数枚の紙が一方の端を綴じられた状態になっているもの」という「本」の定義の範疇に収まっているものばかりです。
それにも関わらず、作品(本)ごとに個性が際立っており、「これは欲しい!」と思ったものはISBN(国際標準図書番号)をメモして、満ち足りた気分で印刷博物館をあとにしました。
(買えるかどうかはわかりません。発行部数が9部という本もありましたから)
見た目は普通の「本」、でもこれほど多様な世界が感じられるのはそれぞれの「触感」が大いに異なるためではないかと後から思った次第です。
そういえば一冊ごとに講評がついており、触覚(触感)について触れているものがかなりありました。
「手触りがよい」「めくり心地がよい」「静かにめくれる」等。
他にも「見た目を裏切って軽い」「重量感がある」、これらも触覚に関わる特徴です。
物理的な差がどの程度であれば人間は違いを認識できるのでしょうか?気になったので「指先の感覚の精度」を調べてみました。忙しいのに。
するとあちこちで引用されている記事がありました。
スウェーデンの科学者たちはこのほど、「人間の指は、振幅が13ナノメートルという小さな隆起でパターン化された表面を識別できる」ことを明らかにした。これは信じられないほど敏感だ。ナノメートルはマイクロメートルの1000分の1。マイクロメートルは1000分の1ミリメートルで、およそ0.00004インチである。滑らかな表面では、人間は大きな分子や単細胞生物を感じることができるらしい。ウイルスの大きさは20~300ナノメートルであり、これは私たちが触れることのできる範囲内である。私たちの指先は、肉眼で識別できる範囲をはるかに超えた世界を知覚することができるのだ。(deepL翻訳)
なんと、滑らかな表面の上にくっついた新型コロナウイルス(直径100ナノメートル)の有無が余裕で判別できるということになります。
本当かよ。
と思ったのですが、近年メディアでもよく「ハプティクス(触覚フィードバックを得る技術)」という言葉を聞くので、五感の中でも触感は実はかなりホットな研究領域になっているのかもしれません。(Wikipedia)
「ハプティクス」、例えばですが「いいね」したとき携帯の画面が少し振動して、押した実感が持てるようにする技術ですね。(いつも吉川醸造のインスタに「いいね」ありがとうございます。この場をお借りしてお礼申し上げます)
この「いいね」の「とっ」という振動も、押した人の温かい気持ちが伝わるようにアタック柔らかめ、余韻を残しかつなだらかに減衰させて心のワビサビを表現するなど非常に精密に設計されているのです。たぶん。
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触覚・触感という観点で(触点で?)飲酒について考えてみます。
酒蔵のブログですし。
お酒を飲むとき、普通の方ならまず酒器が唇に触れ、何らかの触感を与えた後で、お酒が体内に入っていきますね。
口唇の感覚は指先以上に繊細であると言われます(危険物を体内に入れるのを防ぐため発達)から、酒器が唇に触れる感覚は飲酒体験にかなりの影響を及ぼしていると考えていいでしょう。
ところで、近年は猪口やぐい飲み、平杯といった日本の伝統的な酒器よりも、グラス状のもので飲まれるの方が多い印象です。
特に「うすはり」のグラスは、お酒の繊細な温度や液体の流れがよりダイレクトに感じられるとされます。
反面、グラスだとちょっと冷たい感じがするんだよね、と猪口や平杯を好む方も大勢いらっしゃいます。
しかし、これも伝統的な「枡(ます)」、特に塗装を施していない杉やヒノキの枡ですが、酒器としての人気は芳しくありません。(寡聞にして、日常的に桝で飲酒を楽しんでいる方を知りません)
洗うのが面倒とか、木の香りが付きすぎることも理由でしょう。
また巷の「紙ストロー大嫌い派」の主張と同じ問題、つまり素材の吸水性が高いのでふやけてしまう(ように思えて)「ちょっと気持ち悪い」感じ。
さらに枡の縁にはしっかりと厚みがあるので、お酒をダイレクトに楽しめる感は薄く、間に障害物がある感じ。
木には空気が多く含まれており、保温性が高く温かみを感じられるので、枡の人気がないのはちょっと残念です。
グラスと枡、それぞれにいいところはあります。その、いいとこどりをしたのが昭和の居酒屋で生まれたと言われる「もっきり」文化ではないでしょうか。(E・レシピ)
居酒屋での「もっきり(枡の中にグラスを置き、こぼれるくらい日本酒を注ぐスタイル)」は主に視覚的な演出で、グラスの飲みやすさと枡の温かみを両立させた、世紀の大発明と言っても過言ではありません。
-適当すぎる気がしてきましたが気を取り直して-
私は考えました。
グラスと枡のよさを合体させた、究極の酒器ができないだろうか?と。
全体の形状としては伝統的な枡を踏襲しましょう。水が染み込まないよう、素材はガラスにします。
エッジの、口唇に当たる部分を薄くします。(通常の枡も、コーナーの部分でなく、平らな部分で飲むのが正式だとご存じでしたか?←とても飲みにくいです)
断熱性を高め、軽量化を図るためにガラスを「二重壁」にします。
180ml(一合)だと私には飲みきれないので、その半分くらいを目安にしましょう。
こうして考案したのが以下のガラス枡です。二年前に描いたものがようやく日の目を見ました。
英語が適当なのがお恥ずかしい。海外のグラスメーカーに「こんなのできる?」と送ってみたのですが無視されました。
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反省しました。もっと高機能化して世界市場に訴求せねば。
前述のハプティクス技術を応用します。
枡本体に口唇に当たった時に起こる振動を打ち消すフィードバック振動を発生させ接触圧を「吸い取って」、あたかも酒器がそこになく、純粋にお酒だけを楽しめるようにします。
いわゆるタッチキャンセリング機能つき。ストレージ容量は90mlです。
iMassと名付けましょう。
(iは「一合」から。iGlassはなぜか商標登録されていましたので)
黒のタートルネックも買って、準備万端です。
iMass。それは手に馴染む洗練されたデザイン。
シンプルなインターフェイス。
心の中でお酒のデータ(アルコール度、日本酒度、酸度、アミノ酸度)を記録する機能や、アルコール許容量を超えた際のアラート機能も搭載しました。
現在までに第15世代まで構想しているのに、情報統制が厳しすぎたせいか誰もリークしてくれません。
プロ仕様のiMass 15 pro では心の中でゴリラガラスを採用してこれまでにない耐久性、軽量化を実現。
醪の品温・分析値データの管理や火入れ機能、ついでに酒税納税申告書や酒類移出帳など酒造業特有の書類の出力ができるようになり、心の中で過去最大の進化を遂げました。
あなた次第。無限に広がる、サケライフ。
そう、iMassならね。
…以上です。
GN
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浅草に続き、シマダグループのお酒オリエンテッドなホテルが川崎に誕生しました。
枡で吉川醸造のお酒が振る舞われますのでぜひお越しください(浅草は今のところ宿泊の方のみ)。
川﨑にはエヌ常務を撮影モデルとして派遣しました。
絶妙なワケあり感。。。
枡、じゃなくて「Math rock」の雄、バトルスです。ガラスの枡の中で演奏しているように見えてきませんか?
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