シブがき隊の「100%…SOかもね!」、調べてみたら1982年のシングル!おい44年前!!
リリースは7月21日。れっきとした夏のシングルなのでした。
今日の話にたぶんちょうどいい。
さて、その「そう(爽)」の主役をご紹介します。
ロピア様と共同開発した「菊勇 爽(そう)みすてぃ」が完成しました。
酒質設計・製造はトモ・イウチ(吉川醸造所属)、ラベルとPOPのデザインはモエ・イウチ(ロピア様所属)。
血のつながった兄妹ユニットによる作品、その第二弾です。
うっすら濁ったうすにごりで、心地よい甘味と爽やかな酸、ほのかな発泡感。神奈川・大山の伏流水と、新潟県産・五百万石の出会い。生酛(きもと)仕込みで、涼風のように研ぎ澄ましました。

インスタの投稿写真、1枚目だけでお気づきの方、お目が高い。モエ・イウチが蔵に来たときにサイモン&ガーファンクル『Sounds of Silence』のジャケットを真似て撮ったものです。
私の中で兄妹デュオ(仮)といえば以前インスタでアップしたホワイト・ストライプスなのですが私の中でちょっと暑苦しいので今回はこれで。

ところで、日本酒には長らく「夏の飲料」というイメージが希薄でした。
ビールが夏に飲むものの王様として君臨してきたのとは対照的です。ジョッキ、生、グビグビ、プハッ。あの一連の所作は完全に夏の季語です(俳句的な意味ではありません)。かたや日本酒は、燗をつけて、冬に、しみじみと。そういう刷り込みが長く続きました。
近年ようやく「夏酒」というジャンルが定着してきて、爽みすてぃもその一員なわけですが、正直まだビールほどの市民権は得ていない気がします。
私としては、日本酒をもっと自由に楽しんでほしいのです。キリッと冷やして、常温で、燗で。ワイングラスで、ロックで、そして——カクテルで。
最後にその話をしますが、その前に(いつものように)寄り道漢字を。
「爽」って変な形。そーだねー。

「般若」というフォントの「爽」です。
漢字圏以外の国の人はこの字を見てどう感じるんでしょう。鬼殺隊が鬼を切リマクッテル感ジ?
商品名であるにも関わらず、「爽」という字の成り立ちを、私はよく知りませんでした。以前「富」の字が酒壺の象形だったという話を書きましたが、今回もそのノリで調べてみました。
字書によれば、「爽」は「大」+「爻(こう)」でできています。
真ん中の「大」は、両手両足を広げた人を正面から見た形。そしてその両脇に配されているのが、交差する線(✕✕)=「爻」です。
諸説ありますが、この✕は明かり取りの窓の格子、あるいはもの と もの の隙間を表すとされます。
つまり「爽」とは、人の両脇の隙間から、光がすけて見える様子。そこから「あきらか」、転じて「さわやか」の意味が生まれた、というわけです。
隙間を、光が抜ける。風が通る。
——ここで、酒の話に接続する。
隙間があるということは、余白があるということ。要素を足しに足して埋め尽くすのではなく、あえて抜く、削る、透かす。建築やデザインの世界で言うところの「Less is more(より少ないことは、より豊かである)」です。ミース・ファン・デル・ローエの言葉ですが、私が建築設計者だった頃、耳にタコができるほど聞かされました。
爽みすてぃに使った五百万石は、まさにその「引き算」に向いた酒米です。派手に香りで押すのではなく、輪郭を研ぎ澄まし、余白を残して、淡麗に仕上げる。大山の伏流水の清冽さと相まって、盛り込むより透かすほうが似合う酒になりました。
「爽」という字は、その設計思想を一文字で言い当てているのです。モエ・イウチ(ロピア様所属)、そこまで考えて命名したのか。
すばらしい。
いつものように調子に乗って字書を読み進めていたら、意外な事実が三つ出てきました。
その一。「爽」には「たがう」という意味もある。
なんと「爽」は、さわやかな顔をして「違(たが)う・そこなう」という意味も隠し持っています。「爽約(そうやく)」という熟語がありまして、これは「爽やかな約束」ではなく、約束を破ることを指すのです。爽やかな字面で約束をすっぽかす。とんだ食わせ者。
その二。「昧爽(まいそう)」=夜明け。
「昧」は暗い、「爽」は明るい。その境目、つまり夜明け・明け方を「昧爽」と言います。「爽」は"明るくなる"瞬間そのものでもあった。暗から明へ、世界が切り替わる、あのいちばん清冽な時間です。意味はカッコいいが「埋葬」を連想させるのはどうなの。
その三。「爽やか」は、秋の季語である。
俳句の世界では、「爽やか」は秋の季語なんです。夏じゃないんかい。
夏酒に「爽」を冠しておいて、実は秋。ま、いっか。
ただよく考えると、これは全部いい方向に効いてくる話でした。
爽みすてぃは、盛夏に飲む酒でありながら、夜明けの清冽さ(昧爽)と、一足先の秋の涼(爽やか)を先取りする一本、ということにできます。できるんじゃないかな。暑さの底で、次の季節の風をちょっとだけ味見する。そういう贅沢。
約束を破る「爽約」のほうだけは、しっかり否定しておきます。この酒が涼しさをお約束する分には、決して爽(たが)えません。 よく冷やせば、の話ですが。
そもそも、"涼しい"とは。
全方位発散系ブログとしてはここで理系ネタも挟んでおかねばなるまい。
ここまで「爽」だの「涼」だのと書き散らしてきて、ふと立ち止まりました。そもそも私たちが「涼しい」と感じるのは、体のどこで起きているのか。
調べてみると、「冷たさ」は温度計のような単純な計測の話ではなく、口や舌にある受容体(センサー)の仕事でした。中でも有名なのが TRPM8 というセンサー。これは本来「冷たさ」を感じる受容体なのですが、メントール(ミントの成分)にも反応してしまう。
だからミントは、実際の温度が一切下がっていなくても「スースーして涼しい」と感じるのです。
要するに、脳がだまされている。
あ~だまされてたか~。
さらに面白いのが炭酸です。あの「シュワッ」「ピリッ」という刺激、てっきり泡が弾ける物理現象だとばかり思っていました。
ところが実際は、口の中で炭酸ガス(CO₂)が 炭酸脱水酵素 という酵素の働きで炭酸=弱い酸に変わり、その酸っぱさと軽い刺激を、味覚と神経が「爽快感」として拾っている——というのが近年の研究でわかってきました。つまり、炭酸の"キレ"の正体は、ほんのりした"酸っぱさ"と"軽い痛み"だったのです。
ちなみに、こうした「温度やしみる感じを感じ取る仕組み」の解明は、2021年のノーベル生理学・医学賞の対象になっています。
涼しさは、ノーベル賞級のメカニズムなのでした。
ノーベル財団公式サイトの説明ページにリンクする酒蔵ブログは爽爽あるまい笑
で、ここで話は爽みすてぃに戻ります。
この酒には、爽やかな酸と、ほのかな発泡感(=微炭酸)があります。もうお分かりでしょう。冷蔵庫で冷やして"温度"で攻めるだけでなく、酸と炭酸で、涼しさそのものをあらかじめ仕込んである。
名前の「爽」も「みすてぃ」も、ただの雰囲気ではなく、中身の設計そのものだったのです。デザイン担当(妹)ではなく、これは酒質担当(兄)の手柄ですね。
すごいね。
淡麗で余白のある酒、というのは裏を返せば、その余白をあなたの好きに満たせるということです。ここでようやく冒頭の「カクテルで楽しんでほしい」に戻ってきます。
爽みすてぃはうすにごり×微発泡×爽やかな酸なので、割りものにしても味が痩せず、むしろ気泡と濁りが景色をつくってくれます。
名前の「みすてぃ(misty=霧)」を、グラスの中で可視化する遊びです。夏の夕方、以下あたりをお試しください。
① みすてぃ・スプリッツ
グラスに氷、爽みすてぃ90ml、トニックウォーター45ml。すだち(またはかぼす)を½個搾って落とし、軽く一度だけステア。うすにごりの白が気泡に立ち上って、文字通り「霧」がかかります。いちばん簡単で、酒の素性がいちばんよく分かる一杯。
② 雨上がり(和風モヒート)
ミントの葉8枚とライム¼個をグラスの中で軽くつぶし、はちみつ小さじ1をなじませる。クラッシュアイスを詰め、爽みすてぃ90ml、ソーダ30ml。菊勇だけど雨降(あふり)の名にちなんで、雨上がりの緑と清涼を一杯に。ミントの隙間を、酒の甘味が抜けていきます。
③ 大山みどり(抹茶/冷煎茶割り)
薄茶(抹茶2gを水60mlでシェイク、または濃いめの冷煎茶)を先にグラスへ。氷を入れ、爽みすてぃ90mlを静かに注ぐと、乳白と緑が層になって、霧のかかった大山の色が現れます。好みで柚子皮をひとひら。甘味と抹茶のほろ苦さの、余白のある一杯。テロワールをそのまま飲む感覚です。
④ 昧爽(まいそう)
字源のところで出てきた「夜明け」を、そのまま飲みます。グラスに氷、ピンクグレープフルーツ果汁30ml、爽みすてぃ90ml。最後にカンパリ(またはアペロール)を5mlだけ、静かに沈めると、下層に夜明け色がにじんでグラデーションに。混ぜれば、一日の始まりの色。夜明け前に飲むものではありません。念のため。
美味そう。
とはいえ画像はまだまだAI臭さがありますね。どうすればいいんだろう。
もっと言うとこのブログを書いているShopifyの段落の整え方は非常に難しい。というかやる度に崩れる。
誰か助けてください。
まあ、個人的にはクーラーボックスでキンキンに冷やした「100%…爽なのだ!」を日向渓流で飲むのが一番好きなのですがね。
今日はこのへんで。
GN
締めも「沈黙」つながりで。音そのものより、音と音のあいだの余白が主役(たぶん)の曲です。
「爽」=隙間を光が抜ける、という今日の話とどこかで通じている気がします。よく冷えた一杯を傍らに、ヘッドホンで。
Erik Satie - Gymnopédie No.1