着物警察 '21 見つめていたい

世界的着物デザイナーの斉藤上太郎さんが総合スタイリストをつとめるのがキモノイストです。

今年が記念すべき第一回。
【景井ひな 早乙女太一 武田真治 冨永愛 中川大志 永山祐子 西村宏堂 松雪泰子 横山剣(あいうえお順、敬称略させていただきました】という錚々たる皆さんが受賞され、テレビ各局で報道されたのでご覧になった方も多いのではないでしょうか。
吉川醸造ではシマダグループからのご縁があって協賛させていただきました。キモノイスト kimonoist

イベントが今週22.23日と乃木會舘で開かれ、吉川醸造でも展示・販売ブースを出させていただくことになった、それはいいのですが。。。キモノイスト KIMONOIST


(ちょっとひと息)あまり間近で見る機会も少ないので、展示されていた(実際に受賞者の方が着用されていた)着物のディテールを載せておきます。直線裁断とは想像もできないくらいの立体感と重層性です。キモノイスト 景井ひな早乙女太一 キモノイスト中川大志 キモノイスト冨永愛 キモノイストキモノイストキモノイスト 松雪泰子キモノイスト 永山祐子武田真治



(話を戻して)
イベントの直前になってから、協賛企業の代表にしてはあまりにも着物についての知識がないことに気づきました。

よし一夜漬けで勉強しよう、あわよくばイベントにも着流しで行ったりして、、、と意気込んで、まずは大型書店に足を運び、着物コーナーの棚の前に立ちました。
自分が何か新しいことを始める(形から入るタイプ)ときによくやる方法なのですが、こうするとそのジャンルの一般的な位置づけや世間の興味が俯瞰できるのです(「ほう着物の世界ではリメイクが流行っているのだな」「あ~日本酒はワインコーナーの5分の1もないのね」等)。

こうして見てみると(写真を撮り忘れました)「男の着物」を扱っている書籍は「着物コーナー」全体のおそらく100分の1あるかどうかです。
一冊手に取ってパラパラと読んでみたのですが、まず「羽二重」だ「仙台平」だといった用語がちんぷんかんぷんです。
さらに「越中褌(ふんどし)は六尺褌に比べて股間が圧迫されず非常にゆったりとした装着感が得られて肩こりが直る、ついでに彼女ができる(要約)」などと書かれていたので、本をそっと棚に戻して書店を後にしました。

 



イベントには酒蔵の正装?である法被(はっぴ)を着て出席しました。
N常務と杜氏も参加。
キモノイスト 日本酒
確実にその瞬間の着物着用率世界最高空間では、当初きょろきょろするばかりでしたが、二日間でむしろ洋服を着ているのが「俺って変わり者?」感覚になってきますので、「人間がある環境に適応するまでの時間」は思ったより短いようです。


上太郎さんと「着物と日本酒」についてトークセッションをしたり、搾りたてのお酒を来場された方にふるまったりと、とても楽しく過ごしました。

トークセッション一日目(MCは尾上博美さん)。始まったときはよかったのですが。。。キモノイスト
二日目、1杯飲んだだけでこの顔の赤さ(画像は無加工です)。コンちゃんを無理に壇上に上げるなどの狼藉。上太郎さんの足元の星には今気づきました。クール!キモノイスト

 

主に和装系のブランドである他の協賛企業の方々とも仲良くお話しできたのがよかったです。
その方々(着物の世界では尖った存在の企業が多い)が異口同音に「これを着けていると着物警察が来ちゃうかも(笑)」とおっしゃっていたのが印象的でした。



着物警察。斬新な響きです。家に帰って調べると、Googleの完全一致検索で約10万件ヒットしました。どうやら結構なパワーワードのようです。

若い女性が着物を着て外出したとき、街で見ず知らずの年配の女性にいきなり呼び止められ、「帯締めの位置が低いでしょ」と指摘されたり、「帯と着物の色が合ってない」と言われたり、さらには、「それポリエステルでしょ?」とバカにされたり、ひどい場合は「勝手に帯を直されたり」もするという。

冗談かと思うかもしれないが、ネットやツイッターで「着物警察」と検索してみてほしい。被害にあった女性たちの声などが多く見られる。さながら交通違反のキップを切る警察官みたいだから、着物警察と呼ばれ、着物で外出する若い女性に怖がられている。
東洋経済オンラインより引用

 

「それポリエステルでしょ」って。。。何とおっかない話でしょうか。これでは「若者の着物離れ」「私の着物離れ」にも無理はありません。

 



「日本人がいつから着物を着なくなったか?」については諸説ありますが、
1883年(明治16年)に完成した鹿鳴館(ろくめいかん)で、ヨーロッパなど諸外国の外交官を招いて接待をしたとき、日本側の人間は、着物ではなく洋服を正装としたそうですから、このあたりがターニングポイントだったかもしれません。


大山 子犬
これはヤフオクで蒐集家から購入した、THE ILLUSRATED LONDON NEWSの1873年(明治6年)11月29日号からの切り取りです。大山の昔の資料として興味をそそられた(のと安かった)ので購入しました。
およそ150年前のものにしてはきれいなので、後年発行された縮刷版などからの切り取りかと想像します。

 


大山の、大山寺か阿夫利神社で子犬と戯れる人々を版画にしたものです。子犬だらけ。


大山寺「か」阿夫利神社、と書いたのは、版画のタイトルは"FEEDING PUPPY-DOGS AT THE BUDDHIST TEMPLE OF OYAMA"とあるので、大山寺かなと思うのですが、文中にはshrineとかshinto(o)、大太刀にも触れられているのでそれなら阿夫利神社か、案外この辺は記者にとっても曖昧だったのかもしれません。

ちなみにshrine→神社、temple→お寺というのは厳密には正確ではありません。shrine は「崇拝対象の置かれる場所」、temple は「信者の活動の場」という分類が正式で、神道や仏教以外にも使われます。

 


※ちなみに現在大山は紅葉シーズンで、11/28までケーブルカーも夜まで運行しライトアップもされています。この版画も着彩するなら真っ赤だったのかも。


裏面には舞台などの広告がありました。

 


1873年というと徴兵令が出された年ですので、これもその後の日本の洋装化につながる一つのポイントとなる年と言えなくもありません。が当時の民衆の普段着は当然着物です。

子犬に与えるためのおにぎりを作って売っていたと書かれています。奈良や宮島で鹿の餌を売っているようなものでしょうか。
今度大山阿夫利神社の目黒権禰宜(ごんねぎ)に聞いてみようと思います。


どことなく日本人の描いたものではないだろうという感じはいたしますね。そこがまたエキゾチック・ジャパーンで面白いのですが、全体的に着物の描き方にちょっと「違和感」がありませんか?

具体的にどこが?と問われると窮するのですが、「着物と高下駄が合っていないのでは」とか「裾が短すぎてつんつるてんではないか」とか「袖がだぶつきすぎではないか」「それポリエステルでしょ」とか。
やはり日本人としてはちょっと違和感がありますね。

 

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そう、おっかないことに、いつしか自分が着物警察になっていたのです。


GN

 


ポリスの「見つめていたい」。世界的に大ヒットしましたが、実は怖い(俺はずっとお前を見張っているぞ)歌詞も有名。

The Police - Every Breath You Take