部屋とYシャツと、、じゃなかった「徳利と盃と私」という本を読んでいます(光芸出版刊、1969年)。
小林秀雄や白洲正子をはじめ、100名ほどの各界著名人が自慢の酒器を見せびらかすという、愛すべき稚気の横溢する?面白い本です。
ビジュアル的にも多種多様な徳利(とっくり)や盃が出てきて飽きないのですが、陶芸家の直木友次良が書いた一文は特に目を惹きました。
茶に茶道があり、花に華道があるのに、それよりも古い酒に酒道のないことをかねてわたくしはかこっていた。【※かこ(託)つ:不平を言う、嘆く】
確かに!
茶道があるなら「酒道」のある世界もあり得たのでは?という素朴な疑問を私も持ったことがあります。
もしも近現代に至る歴史のなかで「酒」を扱う生活文化・総合芸術が確立されていれば、ここ最近のように「酒類提供ダメ!」→「選手村には持ち込みOK!」→「やっぱりダメ!」というようなコロコロと軽い扱いにはならなかったのではないかとも考えていました。
少なくとも「酒道」という日本古来の伝統文化をそんなにカジュアルに扱ってよいのか?という視点からのカウンターの言論は発現し得たはずです。
「酒道」、本当になかったのだろうかと思い調べてみると、昔(かなりの昔)には存在したようです。以下賀茂鶴酒造 金村敦夫氏の論文から引用します。(→リンク)
酒道:日本における飲酒の品格について
その起源は室町末期に起こったと云われる。それは,酒の注ぎ方,飲み方,返杯の仕方,酒膳の配置など,酒席での礼儀を作法としようとするもので,公家流,武家流,商家流の3つがあった。 以下はその3つの説明である。
(1) 公家流
精神を統一しての,一定の流儀の下での利き酒の競技 。 1474年の足利義尚将軍記 『後鑑 』 に「有十酒御酒酒宴」(10種類の酒を並べての酒宴)とある。 このことからも,酒宴に利き酒が取り入れられていたことが窺える。
(2) 武家流
(イ) 二人盃
二人の武士による酒道で,お互いに誓い合ったり, 約束したり,物を貸し借りしたりと,初対面の時等に行われたもののようである。
(ロ) 武士の集団酒道
1815年,江戸蠣殻町の筆頭奉行 ・加藤治郎左工門が主催した。 彼らは酒宴を一種の礼儀作法の場と心得,武士道精神を根底に置いた心理状態で行うのであって,これを通じて,仲間意識や連帯感を養おうとしていたのである。
(3) 商家流
一 般の武家や商家で行われていた酒道は,古文書「酌の決意 」(東京農大醸造博物館蔵)に残されている。その中では,酒席での酌の仕方や作法が,年中行事に合わせて図解しながら解説されている。
これらの酒道は,江戸末期から明治の中期にかけて次第に消えてしまった。その消滅理由は,酒という至酔飲料であるが故に, かしこまった枠の中にはめられるのを敬遠したためだと云われているが,茶道や華道の様に皆の前で"わざ"を演じてみせる演技性が,酒道には無かったためとも思われる。
単純に、茶道(茶の湯)で言うところの千利休のような、時の権力者にも影響力を行使するスーパースターが「酒道」には出てこなかったというのも大きな理由だろうと思います。
さて、酒道のある世界線はどのようなものでしょうか。こういう「特殊設定モノ」は個人的に大好物です。
つい先日も、ミステリマガジン5月号(特集「特殊設定ミステリの楽しみ」)を探し回って書店をハシゴしたほどです(話題となりあちこちで売り切れた)。
というわけで、酒道のマナーをハウツー記事風にまとめてみました。
以下すべてたわ言ですのでご注意ください。
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酒道と聞いて、なんとなく堅苦しいイメージを持っていらっしゃる方も多いと思います。
しかし、少しミスをしたからといって、咎められるようなことはありません。
とはいえ、何も知らずに酒事やお酒会などに出席するのはやっぱり怖いですよね…。
今回は、お酒会が初めてという方にも安心して出席できるように、会の流れを通し、酒道の作法やマナー、ルールについて大切なポイントをわかりやすくご紹介します!!
酒道の作法~まずはこれだけおさえておこう!~
お酒会を開かれる亭主の方が、どの流派に属していらっしゃるかによって、お酒のいただき方も少しずつ異なります。
今回は、裏万家のお酒会の流れに沿って、ご説明しましょう。
酒道で出されるお酒には、1升ビン(1800mL)と4合ビン(720mL)の2種類があります。
現代では、一般的なお酒会で出されるのは4合ビンの場合がほとんどですので、こちらのいただき方について覚えておけば心配ありません。
●まず4合ビンが正客側から順に回ってきます。
●自分の前に4合ビンが置かれたら、ビンを運んでくださった方と同時にご挨拶をしましょう。
●そしてお酒をいただく前に、下座の方に向かって「お先に失礼いたします」と会釈しましょう。
●4合ビンを両手で時計回りに回転させ、ビンの形やラベルを拝見します。
ここでは奇抜な褒め方をする必要はありません。あなたが見て、感じたままを伝えるのが作法です。
・ビンの感想の例
「これはかの日本山村硝子の逸品、MS720ビンではありませんか。この優美な曲線とコストバランスが絶妙ですね」
・ラベルの感想の例
「バーコードの縦ジマが京都嵐山の竹林を思い出させます。心の中を一陣の風が通り過ぎて行くようです」
●左手で盃を取り上げ、右ひざの正面に置きます。
●そして両手で再度2回ほど4合ビンを回します。なぜ回すかは気にしてはいけません。
●盃の八分目まで注ぎます。「トクトク」と音を立てられるように、日頃から練習しておきましょう。
●先ず一口飲み、その後はゆっくりと最後まで飲み干してください。
●だいたい3口くらいで飲み干せば大丈夫です。
●また、最後の一口は「ずっ」と音を立てることが、飲み終わりましたという合図になります。
●飲み終わったら親指で飲み口を軽く拭きます。
●そして、今度は右手で4合ビンを反時計回りに、左手で盃を時計回りに回します。
●畳に散乱したビンと盃を係が拾いに来て、次の方に順番が回っていきます。
平安 加藤渓山作 白青瓷雲華彫刻高盃
いかがだったでしょうか!?
最初はだれでも緊張すると思いますが、「〇〇さんって日本の伝統文化に造詣が深いんですね~!」と上司や同僚に一目置かれるチャンスです。
ぜひ頑張ってみて下さいね!!
END
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考えなしに書きはじめて、途中の4合ビンのくだりで止めたくなったのですが、何ごともやり切ることが大事です。
こんな堅苦しい「道」はちょっと嫌だ、個人が思い思いにお酒を楽しめるカジュアルな世界でよかった、、というのが浮き彫りになりました(よね?)。
GN
ワルツだったんですね。部屋、Yシャツ、私、部屋、Yシャツ、私、、、。廻るMVの傑作。
平松愛理 - 「部屋とYシャツと私~あれから~」