蔵人ラップ

FKA蔵人Y(Formerly Known as Kurabito Y) から突然、謎の音源が送られてきました。蔵人 カセットテープ

蔵人Yは日体大出身で、少林寺拳法の有段者。

酒蔵では蔵人ラッパーとして働き、現在はホテル王になるため六本木で修行中という、わけのわからない(褒め言葉)人間です。

 


恐る恐る聴いてみました。
これです(PCの方はオレンジ色の矢印、モバイルの方は「Listen in browser」をクリックしてください)。

 

 

 

寒くなる季節ここでひたすら待つ

神奈川の酒とはお目が高え

ぐい吞みでしっぽりとそれが美味え

千鳥足ほととぎす視点ブレブレ

青タンつくり淡々とこなす段々

増える万単位の満タンのタンク

旨口で甘口コメントは辛口

吹き荒れる桜よりも菊に盃

職人の早業をご覧あれ

日本酒マリアージュ牡丹鍋

にごり酒お目当てにうち来てみない?

搾り出す袋吊り月見で一杯

錦の美意識でっかいプライド

1ミリ単位決める精米歩合を

至高の一杯味わってよいよい

大山のふもと伊勢原にこいこい

 

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【蔵人Yインタビュー (インタビュアー:代表G)】

 

G お久しぶりです。お元気でしたか?

Y そうだな。まあぼちぼちといったところかな。

G デモテープを聴かせていただきました。素晴らしかったです。特にリリック面では新境地を開いているように感じました。

Y ああ。人は誰しも前に進まなくちゃならない。そうだろ?(笑)蔵人

G 今日は蔵にいた時のことのことも教えてください。1年ほど前に吉川醸造で学んだことや蔵での出来事が今の時代に繋がって、それが今作に深みを与えているように感じました。

Y いい着眼点だね。吉川ではそれまでの俺の人生を違う角度から見つめなおすことができた。
例えば、、、そうだな、麹米の溝切りは少林寺拳法で言うところの手刀打ちの動きに近いんだが、手の角度が違うからそのままというわけにはいかない。フィジカルの再構築をして、麹室の高温多湿の環境下で自分の身体をスムーズに解放していく必要があるんだ。
あと粕はがしでは「左手は添えるだけ」がポイントだ。板粕(いたかす)が取り出したければそうすべきだ。バラ粕(ばらかす)も味は一緒なんだが(笑)。
まあ一言で言うとSDGsってことだな。麹米粕はがし

G なるほど。

Y もちろん今のジョブに繋がっていることもたくさんある。
日本酒を注ぐときのサウンド、これは四合瓶と一升瓶では全く別物ってことをわかっていないシットな奴らが多すぎる。オーディエンスの心をつかむドープなトクトクサウンドを出すには一升じゃなくて四合、それも雨降の瓶が至高。思わず韻を踏んでしまったが自分の才能に恐怖を感じる時があるよ。わかるか?

G 何となくですが。

Y 注ぐときの瓶の角度も重要だし、あまり強く握り過ぎると瓶が振動しないからヴァイヴスのあるサウンドが出ない。つまりわかりやすく言うと、プライマリーバランスでダイバーシティなソーシャルディスタンスだ。蔵人蔵人蔵人 告白

G 今作のリリックについてお尋ねします。最初は山田錦と美山錦、それぞれへの愛情に引き裂かれるアンビバレンツな心境を表現しているのかなと思いました。ただもっと深層的なところで全体を貫く隠れた主題がある気がしたんです。しかもどこか懐かしいような、日本的な要素もある気がして。

Y (にやっとして)気づいてくれてうれしいね。これは初めて言うんだけど、「花札」をモチーフにしているんだよ。日本人なら知ってるだろ?

 

ホトトギス

青タン

菊に盃

牡丹

月見で一杯

しこう(四光)

こいこい

 

G ああ本当だ!でもなぜ花札なんですか?

Y (ドヤ顔で)そりゃ、「雨降」にちなんだ役のあるゲームといったらこれくらいしかないだろ?

G なるほど。雨札もありますし、雨四光という役もありますね。花札 蔵人花札 蔵人

Y その通り。でももう一つ理由がある。ちょっと難しい話になるが、世の中のゲームには2種類あることを知っているか?「完全情報ゲーム」と「不完全情報ゲーム」だ。詳しくはググってほしいが、将棋やチェスは前者、花札とかポーカーは後者だな。
で、俺が見るにだよ、今の若い連中はそいつらの人生で「完全情報ゲーム」しかやろうとしない。過去の情報や実現した状態に関する情報がすべて与えられているような世の中って、どうなんだ?それはどこかの独裁者の世界観なんじゃないのか?
世界はもっと混沌としてて、偶然に揺り動かされながらスピンするものなんだ。その意味で花札が世界中でプレイされるようになることを俺は夢見てる。

G さっぱりわかりません。蔵人 キック

Y (タヌキの置物を撫でながら)この札なんて、知ってるか?書家の小野道風が柳につかまろうとしている蛙を眺めている様子が描かれている。彼がスランプに陥ったときに、柳につかまろうとして何度も失敗している蛙を見て「自分はまだまだ努力が足らない」と思い直し、改めて努力するきっかけになったという言い伝えから来ているんだよ。
(ウィンクしながら)何と平和で詩的な世界だと思わないか?蔵人 花札

G そうですか。それでは最後に何か最近のニュースがあれば教えてください。

Y 日本酒検定の3級を取ったんだ。敢えてね。あとはそうだな、強面のラッパーに「雨降? 美味くなかったら承知しねえぞ!シバくぞコラ!」って凄まれたことかな(笑) でも飲んでみたらもちろんニコニコよ。
俺が造った酒だぜ?美味いに決まってるからな!からまれる蔵人蔵人 美味しい日本酒

 <構成:代表G  注:本稿は事実に基づいたフィクションです>

 


GN

 

 

ホテルマン 蔵人